特段の事情とは
この裁判は、貸金業者が償還表を債務者に交付していることで貸金業法上の17条書面・18条書面を交付していると認識していたので、貸金業法43条1項の適用要件を満たしている、みなし弁済が認められると信じていた件であり、悪意の受益者ではないと主張していた件です。
この法律で決められている上限利率の超過部分は原則無効です。
みなし弁済が認められる時だけ超過利息を有効な利息の債務の弁済として受領できます。
- 貸金業者は、みなし弁済が認められると認識していた
- その様な認識をするに至ったことについてやむを得ないといえる特段の事情があった
これらのことがない限り過払い金について悪意の受益者と推定されると判断されました。
この特段の事情についても、貸金業者が事前に債務者に上記償還表を交付していれば18条書面を交付しなくてもみなし弁済が認められるとの認識を有するに至ったことについて、一致する解釈を示す裁判例が相当数あったり、有力学説があるという合理的な根拠が必要だと指摘しています。
それゆえ、18条書面の交付がなくても他の方法で元金・利息の内訳を債務者に了知させているなどの場合にはみなし弁済が認められるとの見解も主張され、これに基づく貸金業者の取扱いも少なからず見られたというだけでは、特段の事情というには不足だと判断したのです。
事件番号 | 平成18(受)276 |
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事件名 | 不当利得返還等請求事件 |
裁判年月日 | 平成19年7月13日 |
法廷名 | 最高裁判所第二小法廷 |
裁判種別 | 判決 |
結果 | 破棄差戻し |
判例集 巻・号・頁 | |
原審裁裁判所名 | 東京高等裁判所 |
原審事件番号 | 平成17(ネ)3075 |
原審裁判年月日 | 平成17年10月27日 |
判示事項 | - |
裁判要旨 | 利息制限法の制限超過利息を受領した貸金業者が判例の正しい理解に反して貸金業法18条1項に規定する書面の交付がなくても同法43条1項の適用があるとの認識を有していたとしても,民法704条の「悪意の受益者」の推定を覆す特段の事情があるとはいえないとされた事例 |
参照法条 | - |